風呂場で生まれたアイデアは、どこへ行くのか

「こういうゲームがあったら面白くない?」

友だちとの雑談で、通勤電車で、風呂場で。そんな思いつきが降ってきた瞬間を、たいていの人が経験しているはずです。

そして、そのアイデアが今どうなっているかも、たいていの人が知っています。どこにもない。誰にも遊ばれていない。思いついた本人すら、もう思い出せない。

世界を熱狂させる遊びは、たぶん最初はそのくらいぬるっと生まれます。だとしたら、消えていったアイデアの山は、けっこうな損失です。

参入障壁は、いつのまにか高くなりすぎた

インディーゲームのクオリティは年々上がっています。ストアを開けば、個人制作とは思えない作品が並んでいる。これはもちろん、素晴らしいことです。

でも、これから作り始める人にとってはどうでしょうか。「ゲームの作り方」を調べ始めた人がまず出会うのは、完成度の高い誰かの作品と、「自分がこれを作れるようになるまで何年かかるんだろう」という計算です。

そこで多くの人が、そっと画面を閉じます。

これは熱意が足りなかったからではありません。「作ってもいい」と思えるラインが、高くなりすぎているだけです。

だから、「クソゲー」ではなく「珍ゲー」

【珍ゲー】(ちんげー/英:Chingay)〔名詞〕

① 珍しいゲーム。

② 作った人の偏愛や、とっぴな発想が形になったゲーム。

「クソゲー」という言葉があります。近年は愛をこめて使われることもありますが、本来はとても不名誉な言葉でした。作品を「良い/悪い」の物差しに乗せて、悪い側に置く言葉です。

この物差しがある限り、はじめて作ったゲームはほぼ全部、悪い側に倒れます。当たり前です。はじめてなんですから。

そこで私たちは、新しい言葉を作りました。珍ゲーです。

珍しいことには、貶める意味がありません。むしろ「あなたにしか作れなかった」という証明です。とっぴな発想も、誰にも理解されない偏愛も、独自すぎる切り口も、この物差しの上では全部プラスに働きます。

珍ゲーは、欠点の言い訳ではなく、個性の宣言です。

AIが、技術力の差を溶かした

なぜ今この言葉なのか。理由ははっきりしています。

AIの登場によって、技術力の差がそのまま作品の差になる時代が終わりつつあるからです。実装できるかどうかで諦める必要は、もうありません。

すると、最後に残るのは「で、あなたは何を作りたかったのか」だけになります。技術で差がつかなくなった世界で、珍しさは本物の個性になり、価値の源泉そのものになる。

つまり、いま一番強いのは、あなたの変な思いつきです。

テンプレートゲームは、もう作らなくていい

「まずはテンプレートゲームで作り方を学び、そこからオリジナル要素を足していく」

長いあいだ、これが正解とされてきました。でもこの順番だと、多くの人は本命にたどり着く前に力尽きます。学習のために作った作りたくないものが、いちばん手前に置かれているからです。

珍ゲーの立場は逆です。作りたいゲームを、今すぐ作る。

もう作っちゃうのです。そして、作りながらだんだん上手くなっていくのです。順番を入れ替えただけで、消えるはずだったアイデアが1本、この世に残ります。

私たちが目指す世界

面白いゲームを思いついた人が、面白いゲームを作れる世界。

珍ゲーがやりたいのは、それだけです。上手い人がもっと上手くなる場所ではなく、思いついた人がその日のうちに形にできる場所を作りたい。もっと気軽に、遊びを量産できる世の中にしたい。

だから私たちは、ハッカソンを開き、珍ゲーを投稿できる場所を作り、作り方のノウハウを配っています。「遊んでみたけど、次は作ってみたい」と思った人が、そのまま作り始められるように。

あなたの中にも、行き場を失ったアイデアが1つや2つ、あるはずです。

もう、作っちゃいましょう。それはきっと、世界でいちばん珍しいゲームになります。